Directors Blog #14
ひびのこづえ《Come and Go》の16日の最後の公演にやっと行けました。彼女のプロジェクトではいつもそうなのですが、気持ちがふうんわりと晴れやかになります。さまざまなところからオーディションで集ってきた19人ほどの(男性もわずかにいますが)成人・少女たちが走ったり、ゆれたり、とんだり、集まったりする。その間の顔の表情も、じっとこっちを見つめたり、笑顔だったり、真剣に体の隅々にも気を張ったり、それもさまざまだし、少女から社会に出てそれなりに荒波の中を泳ぎ切った大人の女性たちのさまざまな表情であってみんな少女のもつ百態と言ってよいほどの美質が垣間見られるのですが、それがとってもよいのです。群舞のよさ? あるいは想像するしかない宝塚にもそんなところがあるから人気があるのだろうか? いずれにせよ島地保武はひびのこづえの、あるいはお互いの狙うところを十分に理解しているのでしょう。小野龍一の音楽もよかった。今も耳にこだましています。
でありながら、これはひびのこづえのプロジェクトなのです。それぞれに可愛く異なる海洋生物の意匠が海の動物たちのかそけき臆病な様子を見事に伝えてくれますが、圧巻はなんといっても大きくふくらんだり、あるいは一枚の布になってさざめいたりする銀色にも照り返す白い布。男木の中学校のグラウンドで瀬戸内の風をうけて、まさにField of Dreamでした。観客の表情も動きもイキイキしてくるのです。皆さん次回も、次回はきっと見て下さい。人生が明るくなります。男木では村山悟郎〈生成するドローイング―日本家屋のために2.0〉、〈漆の家〉、松本秋則〈アキノリウム〉、エカテリーナ・ムロムツェワ〈学校の先生〉、川島猛〈瀬戸で舞う〉を閉幕までによく見てこよっと。
Photo: Shintaro Miyawaki
男木・女木は一緒に回ることが多いですが、ともに数があり、ここでも内部を暗記するまで憶えていない作品があるので、終了までによく見ておきたい。(女木島でいえば)あきびんご、大川友希、三田村光土里の作品です。頑張って坂を登って(実はそれほどでもないのですが)、杉浦康益の〈段々の風〉にもあがって来よっと! ここからは屋島から讃岐の山々が見えて、海から来る風をうけて実に気持ちがよいのです。男木・女木はしっかりした作品が多いので、時間をとってゆっくり回ってください。
杉浦康益《段々の風》
Photo: Kimito Takahashi
2022年10月19日
瀬戸内国際芸術祭総合ディレクター 北川フラム