7月14・15両日、夏会期にお披露目される作品を見て回りました。

女木島の平尾成志☓瀬ト内工芸ズ。 / 香川県盆栽生産振興協議会の「feel feel BONSAI」は夏バージョンで縁先も作り直し、盆栽もかなりを入れ替えます。涼しげで、平尾さんの面目躍如の出来上がりです。僕はこのプロジェクトのおかげで、盆栽に対して目が見開かれるようになりました。

男木島のイム・ミヌク(韓国)「Lighthouse Keeper」は、空き家です。島民が持ちよった生活具が配置される屋内に仄かに光るものがあります。2階に登ると夜の海の鏡面が冷たく輝くなかに灯台の僅かな光が影を作っています。これも美しく、建物全体に貼られたフレネルレンズシートの変化とともに必見の作品になっていました。

女木島の西浦。人口20人ほどの集落に入ったタイのナウィン・ラワンチャイクンは、2015年の越後妻有の名作「赤倉の学堂」とは打って変わって、ユーモアで集落に迫りました。10メートルを超える西浦のバベルの塔に島民の看板画が貼られまくり壮観でしたが、鬼の館でのビデオ放映を見てから、今どき滅多にないオンボロバス(失礼!)でタイの音楽に揺られていく行程は(ナウィンは音楽家でもあるのです)現代の忘れられた桃源郷、あるいは竜宮城への旅のような気がするはずです。

前回大活躍の昭和40年会「昭和40年会男木学校 PSS40」は、一軒の旧旅館を使い切ってクセと魅力あふれるアーティストたちが全面展開する勢いのなかで展示作業真っ最中でありました。会田誠さんは「ランチボックス・ペインティング」を滞在制作するといいます。子どもたちの自殺が並外れて多いこの日本を、彼らがどう料理するのか、楽しみです。




宇野港は、見どころのひとつです。街の建物に掲示されている「宇野港『連絡船の町』プロジェクト」の椎名誠、大西みつぐ、織作峰子の3審査員と入選者の写真は感じが良いし、山下拓也の家を繰り抜いて外した彫刻は、これぞ彫刻という強さと複雑さで見る人を圧倒します。会心の作品だと思います。山本哲也のファッション室「哲子の部屋」は内容も充実し、魅力がいっぱい。ぜひ時間をとって試着してくだい。通常の服装の考え方と異なり、平面から現実社会に出てきた衣装の楽しさに新しい体験ができそうです。蓮沼昌宏さんの「キノーラ」という古い原始的な小さいアニメーションの作品「12島の物語回遊式アニメーション」は、撮り船フォトコンテストの写真とともに玉野市文化会館 BAUHAUSの3階に展示されています。宇野港は全体的に充実してきました。




豊島の島キッチンから壇山に登る途中の雑木林にクリスチャン・ボルタンスキー(フランス)の祈りの空間があります。鋳物の風鈴が風に吹かれてささやかに、さざ波のように響きあい動いていく体験に心が洗われるような気がしました。一人ひとりにとって大切な人への想いは、やわらかですずやかな魂魄をこの地に漂わせることができるのかもと思わせてくれました。
スマイルズの「檸檬ホテル」は行ってからのお楽しみ。旅行する若者の風俗に触れた気がしました。檸檬が綴る物語がレモン畑にとつながっていきます。
ケグ・デ・スーザ(オーストラリア)の空き家での「豊穣:海のフルーツ / 豊穣:山の恵み」は、地域に親しまれた特産品の海苔をうまく使った丁寧な作品です。美しい。アーティストの感性のありかが知れて嬉しくなりました。




小豆島は福田の「福武ハウス ― アジア・アート・プラットフォーム」のアジアのアーティストたちの作品も、ひとつひとつは丁寧な味のある作品でした。完成前でしたが、面白さは格別なものになるでしょう。
大部のリン・シュンロン(台湾)の196体の砂型の子どもの像は圧倒的でした。ぜひ訪れてください。やがて風と波に洗われて崩れていくので、早めの鑑賞がおすすめです。




いたるところで外国からのサポーターが活躍していました。しかし香港・台湾からの助っ人も作品制作が終わって、少なくなります。本番の運営に向かって多くのこえび隊が必要です。この運営の手伝いこそ、芸術祭の醍醐味。国や地域、世代や専門を超えた一宿一飯のつきあい、お客さんとの縁が私たちをどれだけ拓き、日常のリセットをさせてくれたか!特に平日の参加をお願いします。
いよいよ7月18日から夏会期。瀬戸芸は皆さんの期待以上に面白いと思います。