圧巻の新作が続々と登場した夏会期も、折り返し地点。心地よい海風や緑色の棚田、澄み切った青空、身に染みる蝉の声などともに、多くの方が夏のアート巡りを楽しんでいます。このブログでは島の様子、来場者のお話をレポートします。今回は高松港からフェリーで20分の女木島で出会った方々の声をお届けします。(随時掲載)
船のデッキからフェリーを見送るスタッフに笑顔で手を振るのは、20年ぶりに女木島を訪れるという60代の女性。「高松に住んでいても島にはめったに行かないんです。芸術祭をきっかけにこの夏、島を巡ろうと思いました。」大阪に住む娘や孫も連れて女木島巡りをするのが楽しみだそうです。
アクセスの良い女木島は、穏やかな波のビーチが特徴で夏はおおいに賑わいます。
また山上に洞窟があることから「鬼ヶ島」としても有名です。
さわやかな海風や夏空を楽しみながら、港から歩くこと約10分。海を臨む一軒の家にたどり着きます。ここに夏会期からの新作が登場しました。
作品空間にゆったりと浸っていたのは、東京からの50代男性。「作品はもちろん面白いけど、何よりこの場所に感動しました。心地よいオルゴールを聞きながら大好きな瀬戸内海、屋島、五剣山をじっくりと眺めるのは本当に贅沢で幸せです。」さらには「日本全国、海外各地を旅してきたけど、瀬戸内海ほど美しい場所はないですね。憧れの女木島でこの作品に出会えて本当に感謝しています。記憶に残ったので、また来たいです。」と話してくれました。
作品を見た大阪から来た40代女性は「なんだか不思議な感じだけど調和していますね。」と驚いた表情。気付いたら機械が動き、ふとしたタイミングでオルゴールが流れる作品に夢中になっていました。
女木島ならではのアートの楽しみは、作品を観賞し、体感して、さらにお買い物も楽しめること。その拠点がビーチの近くにある女木島名店街の寿荘です。
この寿荘に、今年から新たに登場した五所純子さんのリサイクルショップ複製遺跡があります。島の内外から集まった物品を遺跡から発掘するように来場者が取り出して購入するのです。
岡山から訪れた30代女性は、青色のガラス食器を購入。「ものを取ると、跡が残り、空間が変化していくんですね。一緒に芸術作品を作っている感じがして、とても興味深かったです。」購入した食器は、記念品として大切にとっておくそう。
同じく今年の春に登場したガラス漁具店では、アーティストが作った一点もののガラスのルアーやアクセサリーなどを手に入れることができます。
女木島名店街では、アート作品以外にも瀬戸内の島々のお土産物を手に入れることができます。女木島のにんにく醤油や豊島の天日塩などの瀬戸内の特選品や、島の方も買える食パンなども販売。この夏は塩ミルクジェラートが大人気です。
「おいしいアイスを食べて、暑さを吹っ飛ばしてねーー!」と強調するのは、高松から女木島に通うご夫婦。日差しが強く暑い日には、休む暇もないくらいに売れるそう。
宮城から遊びに来た小学生の女の子は「甘さとしょっぱさのバランスがよくて後味が良かった~。」と満足した様子でした。
女木島名店街は寿荘にとどまらず集落の中へも広がっています。
東北から初めて来た50代男性は、島のあちこちに鬼が飾られていることに気付き、「秋田のなまはげを中心に、東北では鬼文化が盛んですが、香川にも鬼がいるんだなと親近感を持ちました。友人にも伝えたいです。」とにこやかに話してくれました。松原に囲まれた古民家の中には尾道出身の絵本作家が、広島から女木島までの旅の絵物語を屏風に仕立てています。さらに奥の部屋の作家自身が描いた各地の鬼の絵の展示も注目です。
さらに集落の中を歩いていくと、古い家の中で手芸屋さんが展開されています。女木島で撮影した写真をファブリック(布製品)にして展示・販売しているのです。夏からはそのファブリックで新たにサコッシュやブローチの販売も始まりました。とても人気です。
作品の布をアレンジしたエプロンが可愛らしい女性スタッフは「家に帰り、時間が経ったあとも女木島を思い返してほしいですね。そして、また女木島に来てもらいたいです。」と話してくれました。
さまざまな人の想いが交錯する女木島。さあ、次は同じフェリーで男木島に渡りましょう。日傘も忘れずに!(続く)