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2022.05.26 瀬戸内断簡⑨


Directors Blog #9


作品巡遊(スペシャルツアー・四国村)

 春会期最終日の5月18日、初めての私が同行する一日のツアーを行いました。高松駅を出発し、沙弥島の南条嘉毅〈幻海をのぞく〉、旧沙弥小・中学校のレオニート・チシコフ〈月への道〉を鑑賞し、そのまま与島に行き浦城バス停、鍋島灯台を巡り、船で直島に渡って宮ノ浦地区で下道基行〈瀬戸内「   」資料館〉、三分一博志〈The Naoshima Plan 「住」〉を観る一日コースです。女木島の〈女木島名店街〉や宇野港街中プロジェクト、小豆島の迷路のまちも付け加えたかったのですが、まずは春会期だけの作品だけはと考えての結果です。ありがたいことに発売数日で満員御礼になりました。感謝です。





 春会期は新型コロナウイルス感染症のクラスターもなく、陽性がわかった方への対応もできました。夏・秋の会期も続行できそうで嬉しいです。今後もやれることをきちっと進めるつもりです。春会期の反省を踏まえて、今後どうするか?夏会期の作品をきちっと作っていこうとスタッフは身を引き締めております。

 春は終幕近くの5月15日、四国村の農村歌舞伎舞台で香川大学×瀬戸内の伝統生活文化・芸術発信プロジェクトチームによる、1965年に初演された四国で一番古いオペラ《四国民話オペラ「二人奥方」》を観に行きました。このオペラも楽しいものでしたが、感銘を受けたのは第一部の《瀬戸内仕事歌》でした。これもオペラと同じく香川大学の若井健司さんの監修でしたが、石切り唄保存会と讃岐民謡保存会と桑山会宇多津社中(宇多津民謡同好会)が加わり、歌と簡単な仕事の仕草を見せてくれるものでした。演目は以下の通り。

1, 石切り唄
2, 地つき唄(道化祭りの唄)
3, 東讃砂糖しめ唄
4, 仁尾綱引き唄
5, 伊吹島舟歌
6, 讃岐麦打ち唄
7, 浜曳き唄(宇多津浜)






 これについては四国新聞5月27日の「瀬戸内物語」(https://www.shikoku-np.co.jp/feature/kitagawa_column/136.htm)に書いたので省きますが、四国村の農村歌舞伎場で讃岐の仕事歌を聞き、観られるのは嬉しいことでした。何となれば、四国村には「砂糖しめ小屋」や「醤油蔵」など仕事と絡んだものがたくさん保存されているからです。また瀬戸芸絡みで言えば、「猪垣」や与島の「灯台の父」と言われたリチャード・ヘンリー・ブラントン設計の鍋島灯台の官舎「鍋島灯台退息所」もあって、四国村探索は実に楽しく心豊かになるのでお薦めです。この民家などに本山ひろ子さんの動物が5組、ペンギン、キツネ、ヒツジ、サル、アメフラシが置かれていて、これも楽しい。今は瀬戸芸がお休みの期間ですが、ぜひ行ってみてください。これらの動物はみな独自の民話の中のもので、この民話も面白い。


「むかしむかしのおはなし 四国村には、うどんが好きなキツネがおりました。お揚げが好きなキツネじゃなくてうどんが好きなキツネでした。キツネの姿ではお店に入れてもらえないので、いつも見ている受付のお姉さんに化けてうどん屋さんの暖簾をくぐります。けれどうどん屋さんにはお見通し。だってお姉さんのお尻にシッポがついているのです。キツネは考えました。いつもお姉さんの姿に化けているけれど、いろいろな人の姿に化ければきっと気がつかないかもしれない。芸術祭になるとたくさんの人がやってきます。さてさてどの人に化けようか。今日もキツネは来る人をじっと観察しているのです。うどん屋さんの入り口で鼻をクンクンさせている人がいたら、それはうどん狐かもしれません。」


民話と美術をお楽しみください。




2022年5月25日
瀬戸内国際芸術祭総合ディレクター 北川フラム

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