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2018.12.14 石垣と絶景の女木島を訪ねて

せとうちのしおり ♯27




高松港から赤くて小さなフェリーに乗って約15分の船旅へ。高松から北へ4キロ先にある、女木島を訪ねました。





女木島は鬼ケ島とも呼ばれ、日本に古くから伝わる昔話『桃太郎』の舞台とも言われています。実際に、島の最高峰、鷲ヶ峰(188メートル)の山頂付近には巨大な洞窟があります。洞窟の長さは約400メートル、約4000平方メートルもの広さがあり、ノミの跡があることなどから人が手を加えたものと考えられています。鬼とはつまり、瀬戸内海一帯を荒し回った海賊のことで、洞窟は海賊の根城だったという説もあります。





高松港を出港したフェリーは、あっという間に女木島の港へ到着します。港に到着すると、船はすぐに次の目的地である男木島へ出発するので、すばやく降りなければいけません。島に着くと、まず目に飛び込んでくるのが巨大な石垣。


高いものでは4メートルほどもあり、まるで城の石垣のように、家屋全体を取り囲んでいます。家が見えないくらいの高い石垣は、黒いものと白いものがあり、瀬戸内の他の島にはない、女木島独特の景観を作り出しています。





女木島で生まれ育った池田茂(いけだしげる)さんに話をうかがいました。池田さんは就職のため一度島を出ましたが、退職後は島に戻ってコミュニティセンターのセンター長を務めています。

「これは、オーテと言って冬の厳しい風と潮を防ぐためにあります。烈風と言う風速30メートルにもなる、歩けないくらいのすごい風です」。

なんでも女木島独特の島の形状が、それを発生させるそう。12月頃、瀬戸内の冬に吹く強い北西の季節風が島を南北に貫く高い山にあたり、方向を変えて吹き下ろします。その風は波しぶきを巻き上げ、霧状となった海水が家屋に雨のように降り注ぐと言います。池田さんは笑いながら話してくれました。

「島ではオトシとも言って、すぐ沖にある高松がまったく見えなくなるくらい。まるで潮のカーテンです。冬は芸術祭はないけど、いっぺん体験して欲しいくらいです」。





港があり女木島最大の集落である東浦。150軒ほどの家があり、人口が減少した今でも90軒ほどに人が住んでいます。オーテはその中でも南の海岸線沿いの家にしかなくて、山に近いほど高く、離れるほど低くなっています。島の東側にはほどんど見られません。





池田さんの奥さんの実家だという、山に一番近くて高いオーテの内側を、特別に見せていただきました。真っ黒な玄武岩で作られた立派な石垣は、海に面した所は高さ4メートルほどになる巨大なもの。石垣の厚みも1メートルはありそうです。

「こうしてまじまじとオーテを見るのははじめてやけど、裏から間に細かい石を入れてる。こうやって補強しとったんやなあ」。

表の面は城の石垣などに見られる、いわゆる俵積み。斜め45度に正確に、大きな石がきれいに積まれています。池田さん曰く、子どもの頃から一度も石垣が崩れるのを見たことはないそうです。





実はこのオーテ、港の護岸工事で埋め立てられた際に、下の部分がコンクリートに埋まってしまいました。池田さんに昔の女木島の写真を見せていただきましたが、狭い砂浜の上に石垣が続き、集落から海がとても近いのがわかります。そこを頭にカゴを乗せて歩く島の人たちの風景は、まるで異国のよう。池田さんが昔のことを懐かしむように話してくれました。

「オーテの下はリヤカーが一台通れるギリギリの幅でした。石垣の間から竿を出して、よく釣りをしたもんです」。

タイムスリップして昔の女木島を歩いてみたい気持ちになります。海から見える石垣が続く集落の島は、鬼ケ島と呼ぶにふさわしい存在感を放っていたのでしょう。





石垣の周囲にはガザニアの黄色い花がたくさん咲いています。女木島はその他に桜の島としても有名で、これらはすべて島の方々の手により植えられているそうです。

「子どもの頃にはすでに700本くらいはあったなあ。桜は今は全部で3000本、毎年100本植えています。ぜひ春に来てください。それは見事です」。

最後に池田さんの好きな島の見所を聞きました。
「仕事で日本全国津々浦々行ったけど、やっぱり女木島が最高です。大島から上がる朝日、夜の海に浮かぶ高松のネオン、大槌子槌と呼ばれるふたつの島の間に沈む夕陽と行き交う船のコラボレーション、ぜひいっぺん島に泊まって欲しいなあ」。

女木島には環境省選定の「快水浴場百選」にも選ばれたビーチもあり、夏には大勢の海水浴客でにぎわいます。高松からわずか15分の距離にある楽園は、見所にあふれています。





帰りがけに池田さんいち押しの鷲ヶ峰へ登ってみました。山頂の展望台からの眺めは、まさに絶景。豊島、小豆島、大島、直島などの瀬戸内国際芸術祭の舞台となる島々が見渡せ、瀬戸内海が一望の元に。一番の島の宝は、この景色なのかも知れません。

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